富山湾海洋深層水

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深層水研究のあゆみ

水産分野研究の始まり

深層水散布実験拡散調査

洋上設置型海洋深層水利用装置「豊洋」による海洋深層水散布実験拡散調査(氷見沖、平成2年8月)

深層水取水施設概略図

富山県における海洋深層水研究の始まりは、昭和61年度~平成3年度に実施された「海洋深層資源の有効利用技術の開発に関する研究」(科学技術庁(現文部科学省))にさかのぼります。

この中で、洋上型海洋深層水有効利用システムの立地場所として選定されたのが富山湾でした。このプロジェクトでは、世界で初めて、表層水と海洋深層水の温度差発電によるエネルギー自給型の洋上設置型海洋深層水利用装置「豊洋」が開発され、同時に、栄養塩の豊富な海洋深層水を洋上に散布する海域肥沃化試験も実施されました。

富山県ではこれが契機となり、平成2年、海洋深層水の利活用や陸上揚水の可能性について調査した結果、県の中部~東部で海洋深層水の取水が容易なこと、冷水性/深海性魚介類の増養殖技術開発などで将来性が見込めることなどを確信しました。平成3年には「日本海固有水を利用した水産実用化研究施設基本計画作成等調査」が行われ、水産試験研究の推進、表層海水や地下水の確保などの面で開発研究に有利であることから、県水産試験場での取水が最も望ましいとの結論が得られました。

こうして、平成4年~6年度に、水産庁と(社)マリノフォーラム21の支援のもとで整備されたのが、現在の海洋深層水利用研究施設です。

非水産分野での研究

海洋深層水は、水産分野にとどまらず、食品、医療、健康増進などの幅広い分野で利用の可能性が広がっています。このため、富山県では県の試験研究機関を中心に、国の研究機関や大学、民間企業などの協力を得ながら、非水産分野での実用化に取り組んでいます。

*以下の紹介は最新の研究を割愛してあります。

県バイオテクノロジーセンター

県バイオテクノロジーセンター(現:県立大学生物工学研究センター)での研究の様子

医薬・健康分野での研究

富山湾海洋深層水から微生物を探索し、有効利用するための基礎研究が行われ、海洋深層水由来の微生物から抗ガン抗生物質(アリソスタチン、コシノスタチン)が発見されるなどしました。
また、海洋深層水由来の乳酸菌を分離し、利用するための研究が進められています。

海洋深層水の温浴や濃縮海洋深層水を用いた浮遊浴によるストレス解消・リフレッシュ効果など健康効果に関する研究が行われました。
また、濃縮海洋深層水を利用した抗アレルギー・抗炎症効果に関する皮膚科学的な研究等が行われています。

海洋深層水ゲル(石英閃緑玢岩微粉末の懸濁液への海洋深層水添加により得られる安定なゲル化物)を利用して、アトピー性皮膚炎やニキビなどの改善効果がある固形石鹸やクリームの開発が行われました。

海洋深層水ゲルを利用した固形石鹸洗浄とクリーム塗布によるアトピー性皮膚炎の改善状況

食品分野での研究

海洋深層水中の塩分には塩化ナトリウム以外にも多くのミネラルが含まれているため、海洋深層水の添加によってこれらのミネラルが食品の味を良くしたり、食感をより高めたりする作用があります。
海洋深層水から作った塩をパン、かまぼこ等の製造に使用すると、弾力性や膨張性といった食感を向上させる効果が認められました。

海洋深層水に豊富に含まれているミネラル類が微生物の発酵を促進することに着目して、ビール、発泡酒や味噌などの発酵食品の製造が行われています。

海洋深層水を利用して、シロエビ、ホタルイカなどの鮮魚の鮮度保持や野菜等を水煮した場合の煮崩れ防止などの研究や商品化が行われています。

一般の食塩を用いて製造した食パン

一般の食塩を用いて製造した食パン

海洋深層水塩を用いて製造した、ふっくらとした食パン

海洋深層水塩を用いて製造した、ふっくらとした食パン

農業分野での研究

海洋深層水アンダークーリングシステムの模式図

海洋深層水アンダークーリングシステムの模式図

電解海洋深層水を利用した水稲の種子消毒の研究のほか、サトイモ、ネギ、いちご、モモなど野菜・果樹の栽培における海洋深層水利用による高付加価値化に向けた研究、チューリップの水耕栽培や切り花への海洋深層水の利用研究が行われています。

ウシ卵子を用いた培養形における畜産分野への利用研究が行われています。

タラノメの促成栽培やシイタケ・エノキダケの菌床栽培における海洋深層水利用も行われています。

海洋深層水の低温安定性を利用したアンダークーリング栽培システムの開発研究が行われてきました。

富山県における深層水の利用研究(非水産分野)

富山県の海洋深層水に関する研究の推進体制は、県商工企画課の調整の下、県内の大学、公設試験研究機関がそれぞれの専門分野でテーマを定め、関係の研究機関や民間企業等と連携して進めています。

これらが大規模な「海洋深層水研究所」のように機能することにより、海洋深層水の特性等の基礎的分野から、医薬・健康増進、農業など幅広い分野まで研究を推進することが可能になっています。

これらの研究成果もあって、富山県内の試験研究機関、民間企業からは幅広い分野の海洋深層水関連特許の出願がなされています。

研究テーマ 研究概要 主な関係試験研究機関等
海洋深層水の
成分、特性の研究
海洋深層水のミネラルなどの成分や清浄性、水温、藻類の生産能力などの特性研究 水産研究所(富山県農林水産総合技術センター)
富山県衛生研究所
民間企業
健康増進関係への
応用研究
海洋深層水浴による健康増進効果と効果的な使用方法をモニターの協力を得て研究 富山県衛生研究所
富山大学医学部
滑川市
海洋深層水を原料とした健康飲料の開発 食品研究所(富山県農林水産総合技術センター)
民間企業
海洋深層水の人体への有効性に関する研究 富山県畜産試験場
医薬、農薬、食品等への
応用研究
海洋深層水から採取、培養した微細藻類から抗アレルギー作用のある物質等を医薬、農薬、食品等の原料として抽出・生産 富山県薬事研究所
県水産試験場(富山県農林水産総合技術センター)
食品研究所(富山県農林水産総合技術センター)
医薬、農薬等の原料として、海洋深層水から採取した微生物から抗ガン作用等のある新規抗生物質、生理活性物質を抽出・生産 水産研究所(富山県農林水産総合技術センター)
富山県立大学生物工学研究センター
富山県薬事研究所
その他パン、漬物など食品関係の開発研究 食品研究所(富山県農林水産総合技術センター)
富山県立大学生物工学研究センター
民間企業等
殺菌、鮮度保存への
応用研究
電解機能深層水の殺菌・洗浄、植物栽培溶液、農産物の鮮度保持等への応用研究 富山県立大学生物工学研究センター
民間企業
魚の鮮度保持用海水氷の製造研究 食品研究所(富山県農林水産総合技術センター)
富山県工業技術センター
農業分野への
応用研究
海洋深層水の農業利用に関する研究 富山県農林水産総合技術センター
富山県県林業技術センター